「英語独習法」という本を読んでみました。慶応大学の教授が書いている本です。
- 作者:今井 むつみ
- 発売日: 2021/02/25
- メディア: Kindle版
finalventさんのブログで紹介されていて、面白そうだったので買いました。
面白かった、というか英語を学習するのに役立つことが書いてあってよかったです。著者は認知科学、言語心理学の専門です。
早くメニュー選定しろよ、の違和感
例えば、大学生が友人同士で居酒屋さんに入ります。メニューを選ぶ時に「早くメニュー選べよ」とは言いますが、「早くメニュー選定しろよ」とは言いません。意味はわかります。しかし、日本語を母語とする人には妙な文章に感じます。この違和感は、日本語の「スキーマ」を理解しているかどうかで生じてくると著者は書いています。
スキーマの説明は、なかなか簡単には難しいですが、この本のキーワードです。言語の仕組みというか、枠組みというか、そういうもののことを指します。我々は日本語を話す時に、大きな氷山の一角から単語を選び出して話しています。その氷山がいわゆるスキーマで、語彙力だけではなく、文法や文章の構造など含まれます。
同じ恥ずかしいでも使い方は違う
英単語に「embarrassed」と「ashamed」があります。どちらも日本語にすると「恥ずかしい」です。しかし、例えば「靴下に穴が空いているのに気付いた。恥ずかしい!」と言う時はどっちを使うのでしょうか?「embarrassed」です。英和辞典で調べるとどちらも「恥ずかしい」なのに、なぜ使う場面が違うのでしょうか。
日本人は「恥ずかしい」という単語は一つですが(日本語スキーマ)、英語には恥ずかしいという単語がいくつかあります(英語スキーマ)。日本語のスキーマに当てはめるとembarrassedもashamedも同じ「恥ずかしい」となり、どちらか一方を覚えておしまい、となります。外国語を学ぶ時は、その言語のスキーマで考えるようにした方がいいとこの本に書いてあります。
aとthe、前置詞の使い方が難しい理由
私は、今までaとtheの使い分け、前置詞の使い方がいくら勉強してもわかりませんでした。aとtheなんて、中学校の一番初めに習います。しかしもう英語を勉強し始めてウン十年となりますが、いまだにaとtheの使い分けや前置詞の使い方がわかりません。この本を読んで合点がいきました。
冠詞と前置詞は、日本語スキーマにないものなのです。つまり日本語を話す時に、「その名詞が単数か複数か」というのは全く意識していません。「自動車が走っていった」と言う時に、その自動車が1台なのか複数台なのか、日本語では全く伝える必要がないのです。しかし、英語スキーマではこれが会話の中に入ってくるのです。
学習ツール
ではどうやって英語スキーマを学んでいくか。この本ではいくつかのオンラインツールを紹介しています。SkELLやCOCAなどが紹介されています。いわゆるコーパスです。著者は、「一つの単語について類義語や、主語、目的語、前置詞などがどのように使われているか、コーパスを利用することによって理解できるとしています。これはとても面白かったです。
例えば、SkELLでlistenとhearを修飾語の観点で調べてみると、listenには「attentively、carefully」という態度を示すものがよく出てくるのに対し、hearでは「never、before」など体験を示すような単語がよく一緒に使われています。
この本では、「単に英語を聞き流すだけではリスニング力はつかない」、「語彙を増やしたり深さを追求するのに多読はほとんど役に立たない」と言っています(全否定ではなく、メリットも認めています)。認知科学の教授らしく、しっかりと論理立てて書いてあり、目からウロコの内容でした。ぜひ英語学習を続けている人にお薦めしたい1冊です。