ジャパネットたかたの元社長、高田明さんの本「90秒にかけた男」を読了しました。新書サイズでさくっと読めます。
以前に日経新聞「私の履歴書」で高田さんの回は読みました。非常に面白かった記憶があります。この本は、日経新聞が高田さんに長いインタビューをした時に、収めきれなかった部分も含めて改めて出版した、と書いてありましたので、もしかすると私の履歴書の時のインタビューを基にしているのかもしれません。
この本は、だいたい高田さんのかっこいい話しか出てこないんですけど、まあだいたいかっこいいんでしょう(笑)。いくつか、心にヒットした部分を抜粋してみます。
最近のヒット商品が小型布団専用掃除機の「レイコップ」です。国内で年間400万台売れていますが、ジャパネットは半分の200万台を売っている。
レイコップが売れているのは知っていましたが、最初はジャパネットが仕掛けたのは知りませんでした。
「売れない」というのはつまり、お客さんに伝わっていないからです。しかし、ここで間違ってはいけないのは、それは商品が売れないのではなく、私たちが原因だということです。
心が痛い。売れないのは市場のせいではなくて、自分側にあると言うこと。
旭人社長はトップ一人ではなく、皆の力、集団の力で私の代わりをしようという「集合天才」という標語を掲げています。 「集合天才」とは米国で生まれた経営理論で、1人の天才に頼らず、組織の各人の才能を集めることで良い結果を出そうという考え方です。
高田明さんから長男の旭人さんにうまくバトンタッチしたようなイメージですけど、やはり明さんの抜けた穴は大きかったようで、なんとかそこを皆の知恵で切り抜けようというのが、新しい社長のやり方のようです。
本社に出社すると、会社の入り口にはテレビから新聞、雑誌まで 40 人以上の報道陣が詰めかけていました。記者会見を開いてほしいとの要請を受け、心の整理もついておらず、事件の全貌も分かっていない中で、急遽会見の場を設けることになりました。「夕方でいいですか」と報道陣に聞くと、「それでは夕刊に間に合わない」、「全国ニュースに間に合うように早くしてほしい」と言われ、午前 11 時ごろから会見を始めまし
2004年の情報漏洩事件のことも書かれています。当時の様子がありありと書かれていて、そのように記者会見は進行するのかと驚きがありました。
「ジャパネットはテレビ通販のイメージが強いと思いますが、意外なことに売上高の4割が紙媒体(新聞、チラシやカタログ、ダイレクトメール)です。メディア別では紙が最大でインターネット、テレビ、ラジオと続きます。
これも意外な情報でした。ジャパネットはテレビで売っていると思っていたのですが、紙媒体が大きく占めるのだそうです。客層は、マーケティング用語でラガードやマジョリティと呼ばれる人たちだそうです。比較的、高齢の方が多いそうです。そこは、自分のイメージと重なりますね。
感度の高いイノベーターやアーリー・アダプターはそもそも細かな商品説明は要らない。価格優先で選ぶから、彼らはカカクコムなどの格安サイトや家電量販店に流れ、ジャパネットの客層ときれいに棲み分けがなされる。
私は、自分のことをアーリー・アダプターと思っています。まさに、上の抜粋通りの動きをします。高田さんもきちんとそういったマーケティングを考えて、売り方を考えているんだと思いました(当然か)。
あまり知られていないことだが、2004年の個人情報漏洩事件で逮捕された2人の元社員のうち1人は、自分の犯した罪を心から悔いて定期的に、 高田氏に手紙を送っていたという。関係者によると、社長を辞めるとき、高田氏はその元社員を呼び、気持ちは十分伝わったからこれからは自分のために前を向いて生きるようにと励ましたという。
これ、最後の方の抜粋なんですけど、情報漏洩の犯人の1人が反省して、定期的に高田さんに手紙を書いているのだそうです。悪いことをした人なので、いい話にしちゃいけないんでしょうけど、やっぱりこういうところに人柄が出るんだなとジーンときました。
高田明さんのいい話しか書いていないのですが、風姿花伝の良さが書いてあって、この人はこんな風に考えているのかと、勉強になる一冊でした。