個人的に、年に1回の放送という意味では、年末の紅白よりも年始のこの番組の方がここ数年毎年の恒例行事になっています(紅白はながら見出来るのがいいということもあります)。そう、欲望の資本主義2020年度版です。2017年の1回目が衝撃的で、大反響があり、そのあと毎年1本ペースでアップデートされているNHKの看板番組の一つです。
www.nhk.or.jp
今年もメモ帳を片手に、集中して見ました。それくらい内容が濃くて、勉強になる経済番組です。今年は全部で10章からなる構成でした。ざっとメモを見直すと、アメリカと中国の貿易摩擦の中で、日本の立ち位置をどうするか、世界に広がる二極化をどうするか、日本は今後どうするか、ということで、日本にクローズアップしたものでした。番組の冒頭にもでてきますが、日本は世界的にも少子高齢化の先端を走っており、経済学者から注目されている国となっています。
以下、少し言葉尻は違いますが、それぞれの章です。
第1章 新冷戦の中の日本
第2章 二極化するいびつなタワー
第3章 救世主か?新理論の波紋
第4章 そして日銀が動いた
第5章 異次元の苦闘
第6章 成長の希望と呪縛
第7章 迫り来る欲望のディストピア
第8章 善意の経済のワナ
第9章 根拠なき跳躍
最終章 不確実性への挑戦
第1章と2章で、世界における日本の状況、貧困が進んでいることが語られます。3章から最終章まで、日本の課題と解決法と日銀のここ数年の政策について議論をします。
今回のシリーズでは主に日本のことに論じられていますが、アダム・スミスから始まった「自由経済」の是非についても数名の学者の意見を基に述べられています。背景としては、アメリカのGAFAが現状はシェアも大きいですが、中国の政府主導の管理された経済もうまくいっていて、今までの資本主義は正念場を迎えているのではないかという意見があるためです。
序盤の問題提起から、終盤の岩井克人教授、元日銀副総裁の岩田規久男さん、その対抗馬としての早川英男さん、証券アナリストの森田長太郎さんが交互に登場してテンポ良くお互いの持論を展開していくところは痺れました。
そして、最後はアメリカの経済学で最初に成功した日本人とされる宇沢弘文さんの残した言葉で締められます。それが以下のもの。
社会的共通資本
「自然環境」、「社会的インフラ」、「制度資本」、これらに属する全てのものは国家的に管理されたり、利潤追求の対象として市場に委ねてはいけない
僕は、この言葉を「自由経済だけでもいけない」と捉えましたが、まだ勉強もした方が良さそうです。コロンビア大のジョセフ・スティグリッツ先生が宇沢先生を絶賛していたのを見て、宇沢先生のことが気になりました。kindleで著書も読むことができます。