KH Chronicle

1975年生まれ。サッカーのことを多めに書いています。医療と経済にも興味があります。

【騎士団長殺し】村上春樹が書きたくなかったんじゃないかと思う文章

騎士団長殺し、読んでますか?めちゃめちゃ面白いですよね。私も第2部の終盤まで読み進めてきています。ゆったりとした文章ながらも確実にストーリーは展開していきます。
 

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

 

 

本屋さんでも相変わらず売れているようです。新潮社の発表によると、発売前の発行部数が1部と2部合わせて130万部。オリコンのニュースによると、発売2週間で、2冊合わせて60万部を超えているようです。

村上氏は過去に『1Q84 BOOK1』(2009年5月発売:最高1位)と『~ BOOK2』(同:最高2位)で、2008年発表開始の当ランキング史上最多となる5週連続(2009/6/8付~7/6付)のBOOK部門1位・2位独占を達成。今作2作の合計売上部数は、登場2週目にして62.0万部( 620,026部) 、『~ BOOK1』と『~BOOK2』の同じく登場2週目時点での合計売上44.4万部を大きく上回るハイペースで売上を積み重ねており、自身が打ち立てた同・連続達成記録の更新への期待が高まる。
村上春樹『騎士団長殺し』2週連続1位・2位独占 | ORICON NEWS


私は2部の終盤まで読み進めているのですが、1カ所、かなり違和感を感じる部分がありました。タイトルにもある「村上春樹さんはあまり書きたくなかったのでは?」と思える文章です。

それは、第1部「顕れるイデア編」の231ページの終わりから232ページに出てきます。

エンジン音が坂道の下に消えてしまった後で、彼がウィスキーをグラスに一杯飲んでいたことを思い出したが(二杯目は結局口をつけられていなかった)、顔色にも全く変化はなかったし、しゃべり方や態度も水を飲んだのと変わりなかった。アルコールに強い体質なのだろう。それに長い距離を運転するわけではない。元々住民しか利用しない道路だし、こんな時刻には対向車も、歩いている人もまずいない。


おそらく村上さんがそれほど売れていない作家で、出版してもそれほど多くの人が読まないのであれば、この部分は書かなかったんじゃないかと思っています。文章的には、そのまま免色さんがかっこいいジャガーに乗って帰って行ったという風に書くとかっこよくまとまるような気がします。

しかし、村上さんの本があまりにも売れているため、おそらく「飲酒運転じゃないか!」と指摘されるかも知れないと思って、エクスキューズするために入れた文章に思えるのです。まあ、それは村上さんにしかわからないのですが。

村上さんの最近の短編集で、「女のいない男たち」があります。この作品の内容で、北海道・中頓別町の議員から抗議されたことがありました。

 

小さく短く息をつき、火のついた煙草をそのまま窓の外に弾いて捨てた。たぶん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう。


上の文章に対して、指摘を受けたわけです。気持ちもわからないではないですけどね。小説なんて、フィクションなので一つ一つ指摘するのもどうかとは思うのですが、村上さんの小説は社会的影響も大きいですから、飲酒運転についても慎重に書かなければいけないのでしょうね。私としては、免色さんがそのままジャガーで帰って行ったとシンプルに終わるのが文章としてはかっこいいんじゃないかなとは思うんですけどね。

今回の「騎士団長殺し」には何度か飲酒運転に関わる文章が出てきます。村上さんはそれに対してすべてきちんと日本の法令に則って記載しています。これ、他の言語に翻訳されて世界で発売されるときはどのように変更されているのでしょうか。気になるところですね。