KH Chronicle

1975年生まれ。サッカーのことを多めに書いています。医療と経済にも興味があります。

【Book】論語と算盤(渋沢栄一の口述書)

渋沢栄一さんの「論語と算盤」を読了しました。前々から読みたいと思っていましたが、やっと読めたという感じです。渋沢栄一さんについては、「はじめに」で出てくる紹介文がわかりやすいです。

会社に出勤するため、いつも通りJRに乗って日経新聞をひらいた。ふと目をやると、車内吊り広告にサッポロビールのうまそうな新製品の宣伝がある。帰りに買って帰ろうと思いながら、お金を下ろすのを忘れていたことに気づき、会社近くのみずほ銀行のATMに寄る。そういえばもう年末、クリスマスは帝国ホテルで過ごして、初詣は明治神宮にでも行くかなあ。その前に聖路加病院に入院している祖父のお見舞いにも行かなくっちゃ……。どこにでも転がっていそうな日常の心象風景のひとコマだが、驚くなかれ、ここに出てくる固有名詞すべての設立に関わった人物が、本書の口述者である渋沢栄一なのだ。


本書では、渋沢栄一のことを「近代日本の設計者の一人」と称しています。埼玉県深谷市出身で、尊皇攘夷に傾きますが、ふとしたことで徳川慶喜の家来である平岡円四郎と通ずることになり、慶喜に見いだされます。大政奉還した後は大隈重信に説得され大蔵省に入省。様々な制度を確立させました。その後自分で多くの事業を立ち上げ、その数470社以上と言われています。


そんな渋沢栄一さんが大事にしたのが、論語。渋沢さんの面白いところは論語で道徳観を高め、きちんと儲け(算盤)も得なさいという思想だったことです。

人情の弱点として、どうしてもモノの方に目が行きやすいため、精神面を忘れてモノ偏重になる弊害が出てくる。これはやむを得ないことだろう。そして、考え方が幼稚で、道徳もあまり持っていないような者ほど、この弊害に陥りやすいものだ。昔は全体的にみれば、知識もとぼしく道義心にも薄いため、利益や損失に目がくらんで罪を犯すものが多かったと思われる。だから、ことさら金銭を軽蔑する風潮が高まったわけだ。


渋沢さんがこういう思考を持ったのは、当時の日本人で商業で成功している人に道徳が欠けている人が多かったからのようでした。例えば、三菱を作った岩崎弥太郎さんから「二人で日本の実業界を思い通りに動かしていこう」と誘われましたが、渋沢はこれを断ります。二人で富を独占するよりは国全体を富ませていきたいという考えが渋沢にはありました。


まあ、岩崎弥太郎がそこまで道徳観がなかったとは書かれておりませんが、渋沢さんはより公平性の高い人物だったようです。個人的には、巻末の「渋沢栄一小伝」が面白かったです。渋沢さんは婦人関係にはだらしなく、結構妻や孫から「ヒヒじじい」と軽蔑されていたと書いてありました(笑)。お妾さんもたくさんおり、子どもも30人以上いるようです。ま、江戸から明治にかけての豪傑にはこういう人が多かったのでしょう。


来年のNHK大河ドラマはこの渋沢さんが主役です。楽しみですね。

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

  • 作者:渋沢栄一
  • 発売日: 2014/01/10
  • メディア: Kindle版