めっちゃ面白い本に出会いました。書いているのは中国人で、「行楽」という日本の観光情報誌を中国富裕者層に向けて制作している背景のある人です。上海市生まれですが、早稲田大学出ていて、日経BP社に勤務していました。
作者が制作している「行楽」という情報誌は、中国のプチ富裕層に向けて書かれています。プチ富裕層というのは、だいたい世帯年収が500万円から2000万円くらいの人達を指します。
中国は、圧倒的に格差社会でして、本書によると世帯年収2000万円以上はさすがに富裕層と呼ぶが、大都市には資産が1兆円を超えるような人が多くいるので、世帯年収1000万円程度では富裕層と呼びにくいそうです。
中間層というのは、日本では馴染み深い言葉でわかりやすいですが、日本の場合、中間層がずいぶん多く、分厚い層になっているのに対し、中国では、貧富の差が激しく、「中間」というのがどの辺りを指すのか、非常に難しいと。
ちなみに、500万円から2000万円という層も、中国では上位10%に入るので、中間と呼ぶにはあまりにも高収入の部類に入ります。そのため、本書では500〜2000万円の人たちを「プチ富裕層」と呼んでいます。
大都市の貧しい人
「中国では、貧富の差が激しい」とよく聞きますが、本書では具体的にどれくらい激しいのか書かれています。
上海では、バーゲンに行ってもらったり、子供の熱の時に風邪薬を買って来てもらう「買い物代行サービス」があります。それにどれくらいのお金を払うのかというと、「30分で10元(およそ170円)」です。
これって、1時間で340円くらいで、手数料など会社の取り分などありますから、実際に代行で行列に並んでいる人は時給100〜200円とかでやっているわけです。
一方で、同じ上海にいながら、年収1000万円前後もらっている人もいるわけです(普通のサラリーマンで)。
本書にも書いてありますが、上海の人口は地方からの流入で増えていて、こういう貧困層が増えているということです。富裕層からすると「もう貧困層は上海に来ないでくれ」という意見があるようですが、よくよく考えると、こういった安いサービスが貧困層の人たちに支えられているので、結局は受け入れているという話になっています。
プチ富裕層は個人で日本にやって来る
よく日本のテレビに、団体で中国からやって来て、各観光地を騒がしく旅行する人たちが出て来ます。しかし、こういった団体旅行をするのは、中国でも地方からの旅行客がほとんどで、プチ富裕層は、一人もしくは少数でやって来ます。
そして、いわゆる中国人が多い観光地には行かずに、日本の文化に接することができる、マイナーな土地に行く人が多いそうです。日本の景色に馴染んでいる、そんなひとり旅の中国人がこの本によく出て来る顧客です。
この本のいいところは、マスメディアで報じられているようなステレオタイプの中国人層は出て来ず、大都市のプチ富裕層の中国人が出て来ます。そして、彼らは日本のどこが好きなのか、どういうおもてなしをしてもらえると嬉しいのか、詳細に書いてあります。
また、比較して中国のネットサービスや百度、アリババ、テンセントのサービスも紹介されています。
私は、チャンピオンズリーグでよく中国に行くので、こういう本はとても参考になり、面白いです。中国のことを少しでも知りたければ、超オススメしたい本です。