KH Chronicle

1975年生まれ。サッカーのことを多めに書いています。医療と経済にも興味があります。

ますます後発医薬品の普及が進むかも

5月17日の日経新聞朝刊で「後発薬との差額 患者負担 」という記事がありました。政府が検討している内容を報道したものですが、実現するとかなり後発医薬品の普及が進みそうな制度です。

政府は後発医薬品(総合・経済面きょうのことば)と効き目が同じで価格は高い特許切れの新薬を患者が選ぶ場合、自己負担を増やす仕組みを検討する。6月末にまとめる財政健全化計画で、歳出抑制策として盛り込む考えだ。患者が安い後発薬を選ぶよう促し、医療費を抑える狙いがある。ただ、新薬を開発する製薬業界が反発するのは確実で、調整は難航しそうだ。
後発薬との差額 患者負担 新薬抑え医療費削減 政府検討 :日本経済新聞


どういう制度かというと、例えば、今まで使っていた先発医薬品の価格が、3000円として、後発医薬品にすると1500円になるとします。従来の制度だと、3000円の3割負担(900円)と1500円の3割負担(450円)の差額が、実際に患者さんが支払う差額でした。上の例でいうと先発医薬品を後発医薬品にすることによって、450円安くなります。

新しい制度だと、後発品に変えない場合、先発医薬品の3割負担(900円)を患者さんが払うのではなく、後発医薬品の3割負担分しか保険でカバーできなくなります。

つまり、先発医薬品を選ぶと、保険からは1050円だけしかお金が出ないので、残りの2050円を自分で払わなくてはいけません。従来の制度だと900円で済んだのが、先発医薬品を続けることによって1150円も高くなるので、これはさすがに今まで先発医薬品を選んでいた患者さんも後発医薬品を選ぶようになるのではないでしょうか?

現場としては、よく患者さんから「ジェネリックにするといくらくらい違うの?」と聞かれることがあるのですが、新しい制度になるとその計算がますますややこしくなりそうなことですね(汗)。一つ一つの薬剤で価格も違うし、患者さんによって1割負担、3割負担と違うわけですから、計算がてんやわんやです。

制度を変えるのはなかなか骨が折れそうですが、1兆円近くの節約になるそうです。医療費ってやっぱり削りにくいですからね。昨日までやっていた治療を、制度が変わったからと言って、今日はやりませんということになると道義的にどうかという気がします。後発品に変えて困るのは先発医薬品のメーカーです。僕も元々勤めていましたが、会社に在籍している同僚や他のメーカーの仲間に聞いてみてもなかなか後発医薬品に市場を奪われて大変そうでした。

武田薬品なんかも国内の医薬品売り上げがなかなか伸びないと新聞にありました。原因は後発医薬品です。先発医薬品メーカーの収益が伸びないと、新しい医薬品の開発につながらないという負の側面があります。増大する医療費を優先するか、新しい製品が生まれるのを優先するか、悩ましいところだと思います。