KH Chronicle

1975年生まれ。サッカーのことを多めに書いています。医療と経済にも興味があります。

作品に多様性を生み出すNetflix

この東洋経済の記事は面白いなぁと思ってじっくり読みました。(最近の東洋経済はページビューを稼ぐために数ページクリックしなければいけない構造になっているのがちょっと辛いですけども)


toyokeizai.net


配信サービスを嫌っていたスピルバーグが、手のひらを返したようにNetflixと手を組んだ、という記事です。映画クリエイターには配信サービスを嫌っている人は他にもいます。有名なところでクリスファー・ノーランです。


そもそもノーランといえば、あくまでも劇場体験にこだわってきた人物だ。最新作『TENET テネット』では、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて映画業界が一時停止を余儀なくされる中、それでも世界規模の劇場公開に踏み切ったほどである。やはりノーランの懸念は、Netflix作品の劇場公開をめぐる現状にあるようだ。

引用元:クリストファー・ノーラン、Netflixで映画を作る条件とは ─ Netflix幹部、アカデミー賞選出の意義を語る | THE RIVER


私のイメージではノーランが劇場に拘るのは、画角だったり、サウンドだったり、「映画館ならではのシステムに合わせて作品を作っている」からです。それが、数インチの小さな画面で、スピーカーもタブレットの小さなものだと、作り手側と受け手側に大きな乖離があります。


しかし、スピルバーグやノーランはまだ恵まれていると私は思っていて、彼らはすでにネームバリューがあるので劇場でも作品がリリースしやすいのです。しかしそこまで売れていないクリエイターはだんだんリスクが負えなくなっている。そのため、ヒーローもの(アベンジャーズ)などの特定のジャンルが劇場公開には多くなっているのです。前にEnglish Journalのインタビュー記事でも、インタビュアーが「売れる映画を作ろうと思ったらヒーローものだけ作っていれば言い」みたいなことを言っていました。


www.alc.co.jp



これでは多様性のある作品が生まれにくくなります。東洋経済の記事でもそこに触れていました。


かつてのような大人向けのドラマや恋愛映画はヒットしてもたかが知れているし、続編製作も難しいので旨味はないとスタジオは考える。だから、そうした作品を作りたいフィルムメーカーたちは、配信サービスやテレビに企画を持っていくようになってきたのだ。

引用元:スピルバーグが「反Netflix」をやめた納得理由 | 映画・音楽 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準


つまり、Netflixによって多様性のある作品をクリエイターは作れるわけです。そして数館のシアター公開で終わるのではなく、世界中で見てもらえる。また、もしスタート時に視聴ビューが悪い作品でも口コミで広がればNetflixも改めてプロモーションしてくれる。なんだか、非常にNetflixとクリエイターは良い関係を築き上げていきそうな雰囲気があります。



このブログでも何度も紹介している上のNetflixの本。本当にオススメです。私は熟読しています。基本的にNetflixの人事の話ですが、大学の先生が共著しており、論理的になぜNetflixの人事制度がうまくいっているかを紹介してくれます。これを読むと、Netflixがいかに現場の人間に権限を与え、チェレンジさせて、失敗から学び、会社として向上しているかを知ることができます。


映画好きにはたまらない会社ですね、Netflix。