KH Chronicle

1975年生まれ。サッカーのことを多めに書いています。医療と経済にも興味があります。

空飛ぶ車が超えなければいけない3つの壁

NewsPicks Publishingから出ている「2030年 すべてが加速する世界に備えよ」という本を読んでいます。400ページちょっとで、文字も小さいのでかなりボリュームのある本です。



まだ全部読み終わっていません。1章を読み終わったところです。空飛ぶ自動車、自動運転車について書いてあったので、まとめて書いておきます。私が書くと薄っぺらくなりますが、いろいろな分野で「収穫加速の法則」と呼ばれるハイスピードの革新が起こっており、それが自動運転車、空飛ぶ車に適応されていると言うことです。


もうずいぶん前から「空飛ぶ車」は空想されてきましたが、「なぜ今なのか?」という問いを本書ではしています。「今まで散々語られてきた、空飛ぶ車のテクノロジーが、なぜこのタイミングで成立しようとしているのか?」という問いです。その回答が「コンバージェンス(Convergence:融合)」です。


空飛ぶ車が成立する3つの条件

空飛ぶ車がクリアしなければいけない壁は、以下の3つです。

  1. 安全性
  2. 騒音
  3. 価格

空飛ぶ車のモデルになっているのがヘリコプターです。ヘリコプターは浮揚するのに単一の巨大なローター(回転翼)を使います。この構造が「騒音(バラバラと言う音)」と「安全性(単一のローターが止まると墜落)」の壁となっています。


なぜローターを複数にしないのか?

単純に重いからです。出力重力比の問題で、ガソリンエンジンではこれは実現できません。しかしここ10年で、ドローンが発達しロボット工学者が新しいタイプの電磁モーターを考案しました。この電磁モーターが作られた背景には(1)複雑なフライトシミュレーターを実現させた機械学習の進歩、(2)耐久性のある材料科学のブレークスルー、(3)いろいろなサイズのモーターに対応できる3Dプリンティングの進歩があります。


本書によると、ガソリンエンジンの熱効率が28%なのに対し、新しい電磁モーターだと95%と言うことです。しかしこのモーターが作られたからと言ってすぐに空飛ぶ車ができるわけではありません。多数の電磁モーターと空飛ぶ車の制御をリアルタイムに連携させるためのコンピューターの発達が必要でした。またその状況を読み取るセンサーも必要です。その中に加速度センサーというものもあり、それはいわゆるスマホの歩数計などで近年培われてきた技術です。


「騒音」、「安全性」をクリアすると最後に「価格」の課題が残ります。ところで空飛ぶ車は誰が作りたがっているか、と言う話ですが本書ではウーバーが出てきます。つまりライドシェアとして空飛ぶ車を開発しているのです。そのウーバーの需要に見合った台数をサプライヤーは供給しなければいけません。非常に高速な3Dプリンタでこれを作り出す必要があると言うことです。本書では価格はその程度しか触れられていないので、やはり供給台数を増やして1台当たりの単価を安くしていこうという話になるのでしょう。


機会があれば自動運転についても書いてみますが、これまた我々の生活に大きな影響がでそうな話になっています。


ここから私見

この本はアメリカ人が書いたものです。あまり既得権益に縛られないアメリカで書かれた本です。はたして日本で空飛ぶ車はすぐに実現するのか、自分で考えてみました。日本では以下の2点は最低考えなければいけないことかと思います。

  1. 空の所有権(上空300メートル)
  2. 既得権益


1番目の空の所有権は、前にテレ東の経済番組でやっていました。個人が所有している土地の上空300メートルまではその個人の所有権となるということです(アメリカはどうか知りません)。もし空飛ぶ車が出来ると、どれくらい上空を飛ぶのだろうと気になりました。スカイツリーのちょっと上、上空800メートルくらいなら誰から何も言われないのでしょうか。そこが気になるところです。


また、導入する時に既得権益からの反対もありそうです。日本やドイツでウーバー(配車)がそれほど普及しないのもタクシーなどの既得権益があるからだと思います。そこの人たちの生活を守りながらどうやって空飛ぶ車が普及するのか、ここ10年、20年くらいの話になりそうです。