KH Chronicle

1975年生まれ。サッカーのことを多めに書いています。医療と経済にも興味があります。

マイケル・フェルプスが水泳で最速だったのは、とても胴長だったから!

ビル・ゲイツの「GatesNotes」が更新されまして、今年のお薦め書籍5冊が発表されました。


www.gatesnotes.com


その中で、「Range」という本がお薦めされていて、その著者がTEDで「Are athletes really getting faster, better, stronger?」という話をしていると書かれていました。その動画がこちら↓。


www.ted.com


これ、めちゃめちゃ面白かったです。約15分ほどの動画で、詳細はそちらで確認して下さい。


例えば、1936年に世界記録を持っていたJesse Owensは10.2秒で100mを駆け抜けました。現在、100mの最速記録はUsain Boltです(9.77秒)。果たして、人間の肉体はそれだけ進化したのか?という問いに対して、様々なデータを基にその速くなった理由を紹介していきます。著者が示しているのは、以下のような点です。

  • 1936年のグランドは、衝撃を吸収しやすかった
  • 1936年はスターティングブロックはなく、スコップで足場を掘っていた

つまりトラックの状況が違っていて、その分を計算し直すと本来のタイムであればJesseとBoltには4m以上の開きがありますが、実際は1歩ほどの差しかなかったということです。また、水泳については過去約60年ほどで、3回の飛躍的なタイムの向上がありました。その理由は以下。

  • フリップターンの発明(折り返しでくるっと回るあれです)
  • プール脇の排水溝の発明(プールの水流が安定した)
  • 水着の改良

そして、ここからこのブログにタイトルに絡んだ内容が紹介されます。なぜマイケル・フェルプスが水泳で最速なのか。20世紀前半の運動選手は、走り高跳びの選手も砲丸投げの選手もみんな中肉中背の同じような体格でした。しかし、研究者やトレーナーが、各種目にフィットした体躯が有利であると考え始めてから、いわゆるその競技の特化した体つきを持った選手を選別するようになりました。

現代において、走り高跳びの選手よりも砲丸投げの選手は平均で59キロも体重が重いと述べられています。そこからNBA選手の高身長の話になり、マラソン選手の体型やマイケル・フェルプスのことが登場します。

マイケル・フェルプスは体型的にはカヌーのように非常に胴長の体型のため、水泳に向いているということです。逆に長距離走の選手は、大きく足をストライドするため足が長いことが多く、マイケル・フェルプスとヒシャム・エルゲルージ(1.6キロ走の記録保持者)は身長にして18センチ違いますが(フェルプスの方が高い)、一緒に立ってみるとパンツの高さが同じです。つまりフェルプスは異様に胴長なのです。

話の最後は、以下のように締めくくっていました。

テクノロジーの変化、遺伝子の変化、考え方の変化。 新しい路面であれ新しい水泳技術であれ、スポーツの革新、スポーツの民主化、世界中の新しい体や人口の広がり、そしてスポーツの想像力、人体が本当にできることの理解は、 アスリートをこれまで以上に強く、速く、大胆に、そしてより良くするために向上してきました。

なんというんでしょうか、世界記録が更新されているのは単純に環境が改善したからというわけでもなく、非常に示唆に富む話でした。僕もこの人の本を読んでみたいです。