KH Chronicle

1975年生まれ。サッカーのことを多めに書いています。医療と経済にも興味があります。

【Book】イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

ハーバードビジネススクールの有名教授、クレイトン・クリステンセン先生がビジネスだけでなく、人生の生き方についても述べた本、「イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ」を読了しました。



ハーバードビジネススクールを卒業していくような生徒は優秀な人ばかりですが、中には仕事を優先して気付いたら家庭がうまくいっていなかったというパターンもあるという話です。そういう人が大切にするべきは何なのかをこの本は示してくれます。

この本の面白いのは、章の前半に実際にあった会社の失敗例、成功例を述べて、それを家族にも当てはめて説明しているところです。例えば、デルコンピュータの失敗例を挙げて、このように書いています。

多くの親がデルと同じ間違いを犯し、子どもに知識、スキル、経験といった資源を、あふれんばかりに注いでいる。そしてデルの場合と同様、そうするに至った一つひとつの決定は、筋がとおっているように思われる。わたしたちは子どもの成功を望み、それに役立つような機会や経験を与えたつもりでいる。だがこうした活動は本質的に、子どもを深く関わらせ、困難なことに取り組む意欲をかき立てる経験ではないために、将来の成功に必要なプロセスを養う機会にはならないのだ。

デルコンピュータは、始めは組み立て生産ラインだけを台湾の企業ASUSに委託していましたが、ASUSが「マザーボードの設計もできますよ。しかも廉価で。」という提案を受けて、マザーボード設計も委託します。デルとしては、開発にかかる資産を減らすことができるため、経営効率が上がり(純利益/純資産、の比率が高い方がいい)、願ったり叶ったり。そして、さらに外注の分野を増やしていき、いつのまにかASUSは自社でPCを作って世界に販売するということになりました。

デルのその時の決定は、良いことであったとしても、全体で考えるといつのまにか大きな間違いをしてしまった、ということを子育てにも活かして欲しい、と言うような内容です。記述の仕方が少し遠回りでわかりにくいところもありますが、「家族を大事にしろよ。」ということが十分伝わってくる本です。

ざっくり言うと、会社の仕事は短期で達成感を感じられるものだが、家庭の場合は、4歳、5歳にしてあげたことが、20歳、25歳になった時に実ると言うこともあり得ます。非常に長期的な視点で捉えなければいけませんが、そこをおろそかにしてはいけない、ということが伝わってきました。