試合が終わった瞬間、メキシコの選手は泣いていました。嬉し泣きでしょう。最強ドイツに見事勝ったのです。しかも、完全に狙ってやった印象のある内容でした。
日本刀のような切れ味鋭いメキシコのカウンター
ざっくり言うと、ドイツのポゼッション対メキシコのカウンターという様相の試合でした。メキシコといえば、ロンドン五輪で優勝した時の印象が強く、サイドで丁寧に三角形を作って崩して行くイメージでした。
しかし、今回は違った。チチャリートともう一枚を残して守備を行い、カウンターの時はトップのチチャリートに当てて、短いバックパスを行い、その間にロサーノやラジュンが駆け上がってドイツの裏を狙うというシステムでした。
Twitterでも、様々な分析ツイートを見かけました。いわゆる分析家の人が大興奮の内容だったのです。
これはこの時点ですでにこの大会ベストゲームであるとともに、戦術史においてもメルクマールになりそう。すごい戦術、すごいプレー、すごい試合だった。
— 五百蔵 容 (@500zoo) 2018年6月17日
クロースとフンメルスにマンツーで応対し、ドイツの攻撃を右サイドに偏らせたメキシコ。その攻撃を幾度も阻み、奪い、跳ね返し、カウンターへと繋げたグアルダード。彼の驚異的な対人能力無くしてメキシコの勝利は無かった https://t.co/IPWhjVOUfO
— 羊 (@GP_02A) 2018年6月17日
ドイツの完成度が高いことを逆用し、綿密な準備で相手の「防げないゾーン」を徹底して叩いたメキシコ。ハリルホジッチがアルジェリアで成し遂げようとしたことを、更に高いレベルに昇華しての実現。これは複数回視聴、必須のゲームになりそうです。
— 結城 康平 (@yuukikouhei) 2018年6月17日
メキシコ代表のオソリオ監督は大学で運動科学を学んだ学者肌で、相手ごとの的確な分析が特徴。予選では多数の布陣を相手ごとに使い分けてたので有名。
— すないんてる🇮🇸🇭🇷 (@interista0421) 2018年6月17日
戦術大国ドイツのお株を奪うくらいの分析と準備をしてきたことは想像できる。コーチングエリアにメモ帳とペンを置いてたのが印象的だった。#MEX pic.twitter.com/JGrZZ4X53y
戦術ももちろんですが、個人のスキルも高かった
この試合は、戦術的に非常に面白かったので、追々分析がなされるでしょう。ただ、メキシコは戦術だけでなく、個人のスキルも非常に高かったです。
まず、パスが非常に正確で、トラップもきちんとしていました。カウンターで最初にチチャリートに当てて、そこからボールを散らすわけですが、チチャリートから他の選手へのパスがまず正確。
カウンターと簡単に言いますけど、味方選手が走るのに合わせて、ちょうど良いところにパスを出さなければいけません。今回の開幕戦、ロシア対サウジアラビアの試合を見て貰えばわかりますが、ロシアのカウンターの精度はかなり悪かったです。
いや、もちろんみんなプロがやることなので、そこまで下手ではないのですが、数十センチのズレが、カウンターの場合、0コンマ何秒の遅れにつながってきます。それが、カウンター失敗、もしくは途方も無い変な方向へのシュートとなるわけです。
メキシコは、そこの精度が抜群でした。高速スピードの中でもかなりきちんとパスを出せていました。これは、ロンドン五輪の時の正確なショートパスに見られる、育成の時からの指導が良かったのではないかと思っています。
オソリオ監督の采配
理論派の監督として知られるメキシコの監督、オソリオ。この試合でも、メモを取って状況判断をしていました。
前半で1点を先制したメキシコは、後半の途中から5バックに変化しました。フットボリスタの選手名鑑を読むと、この監督のもとではメキシコは、非常に多彩なフォーメーションを元々取っていたようです。
この5バックも軽やかに選手はこなしていました。アイスランドの組織的な守備も相当なものだと思いましたが、メキシコの5バックも見事でした。ドイツもエジルやクロースをサイドにやってみたり、マリオ・ゴメスを投入してなんとかこじ開けようとしましたが、メキシコの方が一枚上手でした。
また、ドイツはミドルを何本か打っていましたが、GKが名手・オチョアのため、それも不発。逆にいうと、オチョアだからメキシコはあえてミドルレンジで打たせていたようにも思えました。
まあ、オソリオ監督からすると、「全てが上手くハマった」最高の試合だったのではないでしょうか。見ていて、本当に面白かったです。