KH Chronicle

1975年生まれ。サッカーのことを多めに書いています。医療と経済にも興味があります。

【book】1Q84 BOOK3

夏期休暇中に、村上春樹さんの「1Q84 BOOK3」を読みました。

1Q84 BOOK 3
1Q84 BOOK 3
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村上 春樹
新潮社 (2010-04-16)
売り上げランキング: 84
おすすめ度の平均: 4.0
5 1Q84・・・永遠に続く?かも!
3 book4につづいても不思議じゃないけど
4 『1984』を読むと
3 準<引きこもり>の書いた<セカイ系>の物語
5 純愛ファンタジー

アマゾンの評価を見てみると、賛否分かれているみたいですね。確かに600ページもある割には、ストーリー展開があまりない、非常にゆっくりとした作りになっています。BOOK1、BOOK2で「空気さなぎ」や宗教団体「さきがけ」などが主体だったのに対して、BOOK3は、天吾と青豆がいかにくっつか?ということが話のメインになっています。

けっこうきつい評価になると、「600ページも使って、天吾と青豆がくっついただけの本じゃないか!」というものがありましたが、僕はそうは思いません。メインは確かにそうだったかもしれないですが、派生した細かいところで、いろいろと考えさせられるところがありました。

僕がBOOK3で印象に残ったシーンは、天吾がお父さんのお見舞いのために「猫の町」へ行くところですかね。そこで3人の看護婦さんと知り合って、さらにお父さんの死を迎えるシーンに進んでいきます。葬儀場で看護婦の一人「安達クミ」と話をするのですがそこの会話が妙に印象深かったです。引用しておきます。

「でもある場合には、死んだ人はいくつかの秘密を抱えていってしまう」と天吾は言った。「そして穴が塞がれたとき、その秘密は秘密のままで終わってしまう」
「私は思うんだけど、それもまた必要なことなんだよ」
「どうして?」
「もし死んだ人がそれを持って行ったとしたら、その秘密はきっとあとには置いていくことのできない種類のものだったんだよ」
「どうしてあとには置いていけなかったんだろう?」
安達クミは天吾の手を放し、彼の顔をまっすぐに見た。「たぶんそこには死んだ人にしか正確には理解できないものごとがあったんだよ。どれほど時間をかけて言葉を並べても説明しきれないことが。それは死んだ人が自分で抱えて持っていくしかないものごとだったんだ。大事な手荷物みたいにさ」
天吾は口を閉ざしたまま、足もとの日だまりを眺めていた。(483ページ)

このシーンは、お父さんの死が絡んでいますが、そのまま日常でも言えるかなと思います。なかなか人に説明するのが難しい、自分にしかその感覚がわからないようなことが日常でもあると思います。そういう時、僕は人に言うのをやめて、自分の心にしまっておく時があります。だからこの場面は、すごく印象に残りました。

あと、第25章、「冷たくても、冷たくなくても、神はここにいる」の部分。タマルという人物が牛河を殺すシーンなのですが、ユングを引き合いに出して、非常に文学的にストーリーが展開します。もともとタマルという人物が妙に文学チックな話し方をするのです。ここの章は、結局牛河が殺されてしまうのですが、そこに行くまでの二人の会話がすごく独特です。引用するには長すぎるので、引用はしませんが、一度は読んでおくといいと思います。

ま、本筋で言うと大きなストーリー展開はないですが、やっぱり村上春樹だなぁと感じるところは多くあります。BOOK1、BOOK2を読んだのであれば、せっかくなんで、BOOK3も読むことをおすすめしますね。