KH Chronicle

1975年生まれ。サッカーのことを多めに書いています。医療と経済にも興味があります。

【Book】みみずくは黄昏に飛びたつ

川上未映子さんと村上春樹さんの対談本、「みみずくは黄昏に飛びたつ」を読了しました。初めの方はそれほど面白くなかったんだけど、中盤から面白くなってきて、そのまま最後までたどり着いた、という本でした。川上未映子さんの本は読んだことがないんだけど、大の村上ファンだったのですね。

みみずくは黄昏に飛びたつ

みみずくは黄昏に飛びたつ

 

 

Kindleで読み進めて、気になるところをハイライトしていったら全部で35個ありました。村上春樹さんがどういう風に小説を書いているか、どのような気持ちで執筆に臨んでいるか、川上さんの質問が絶妙で、本当に面白いところを聞いてくれたな、という対談でした。

個人的に面白かったのは、「小説というのは信用取引みたいなもので、作者は丹精込めた作品を読者に渡し、読者はその作品をはい、わかりましたと受け取ってくれる、その関係が大事なんだ」という部分です。引用しますと、

つまり「これはブラックボックスで、中身がよく見えなくて、モワモワしてて変なものですけど、実は一生懸命時間をかけて、丹精込めて僕が書いたものです。決して変なものではありませんから、どうかこのまま受け取ってください」って僕が言ったら、「はい、わかりました」と受け取ってくれる人が世の中にある程度の数いて、もちろん「なんじゃこら」といって放り出す人もいるだろうけど、そうじゃない人たちもある程度いる。

 

その信用取引を成立させていくためには、こっちもできるだけ時間と手間をかけて、丁寧に作品を作っていかなくちゃいけない。読者というのは、集合的にはちゃんと見抜くんです。これはちゃんと手間をかけて書いているものだとか、これはそうでもないとか。手を抜いて書かれたものは、長い時間の中ではほとんど必ず消えていきます。

 

また、騎士団殺しの話もたくさん出てきました。川上さんがまたマニアックな質問を投げかけます。よくそんなところまで覚えてるなぁと感心しました。川上さんの言葉を引用しますと、

今回の小説のなかで面白いのは、主要な場面場面で、登場人物たちが「騎士団長殺し」の絵を再現していることですよね。屋根裏部屋で絵を発見するシーンは、「騎士団長殺し」で「顔なが」が穴から顔を出している構図だし、療養施設の雨田具彦の部屋でも同じようなことが再現されていて、入れ子状になっている

 

おぉ、確かにそんなシーンがあったけど、入れ子状になっているなんて全く気づきませんでした。他にも、騎士団長殺しは初めから32章で考えて作られたとか、村上さんが執筆する中でとても重視するのはストーリーではなくて、文体なんだとか、そういう突っ込んだ話が盛りだくさんです。

騎士団長殺しを読み終わった人であれば、とても面白く読める対談本だと思います。